社会的入院の全廃方針を取りやめ 介護療養病床存続の方向
2016/04/16
「介護療養病床をなくしていこう」と言う政府の改革が変わるようです。
療養病床とは、長く療養する人が使う入院ベッドのことです。この入院にかかるお金は、医療保険を使う「医療型」と介護保険を使う「介護型」があります。
政府は、社会的入院と言われてきた療養病床をなくし、リハビリ目的の老人保健施設への転換を進めてきました。社会的入院は、5割が医師の対応が不要で、3割が自宅や福祉施設で生活できると判断していました。
今回の見直しでは、介護療養病床には5つの条件があります。
1.身体に重篤な疾病がある人や合併症のある認知症患者が一定割合以上いる
2.たん吸引や胃ろうでの栄養補給を受けている人が一定の割合以上いる
3.終末期の医療を受けている人が一定の割合以上いる
4.生活機能を維持改善するリハビリテーションを行っている
5.地域に貢献する活動を行っている
このような条件を満たしている病院は、存続が可能になりました。
これにより、条件を満たしている病院には、現在より手厚く介護報酬を支払い、条件を満たしていない病院は介護報酬を引き下げ、リハビリを手がける介護老人保健施設への転換を促すようになります。
この社会的入院の基準を見直し、全廃方針を転換することになった背景には何があるのでしょうか。
これは、自宅で高齢者を視る体勢が整わず、全廃した場合、これらの高齢者の行き場所がなくなると判断したからです。
しかし、医療の必要性がないにも関わらず、家庭の事情で病院で暮らす高齢者の社会的入院が増えることにも懸念されます。
その反面、介護療養病床が全廃になり、たん吸引、胃ろうで栄養補給、透析などを行っている認知症高齢者を自宅に戻されたら、家庭が崩壊してしまうケースもあります。
事実、有料老人ホームに入れることができず、自宅で高齢者の世話をするために仕事をやめざるを得ず、収入が激減。その上、家庭も崩壊した事例を耳にすると介護療養病床は必要なのかとも思います。
介護療養病床があれば助かる家庭も多くあると思いますが、その分、国の負担は増える一方です。どんな状態になっても高齢者が安心して暮らせる世の中になるにはまだ先の話のようです。