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みんなの介護

認知症になると親の財産が使えない・家が売れない 家族信託で老後の財産管理

   

老人施設への入居を検討するときに、一番心配なのは介護費用ですよね。

介護費用は、入居している限りは、ずっと支払い続けなければなりません。

介護費用は、平均で1ケ月に15万円~20万円かかるといわれていますから、最低でも年間200万円は必要となります。

とりあえず年金や貯金を取り崩して・・と計算しますが、わからないのは、それが「いつまで続くか」ということですよね。

最近は、寿命がどんどん伸びてきており、計画していた年数をオーバーしてしまい、あわてている人が増えています。

親の介護のお金がない

そんな時には、「実家を売って介護費用の足しにしよう」と、思っている方が多いのではないでしょうか。

でも、いざ実家を売ろうと思ったら、「家を売ることができない!」なんてことがあるので、注意が必要です。

しかも、このようなケースは、最近頻繁に発生しているのです。

親が認知症になると貯金も下ろせない事態に

親の介護費用をつくるため、家を売ることできないというのは、どんなケースなんでしょうか・・。

親の家を売る

家を売るには、家の所有者である本人が直接売買の契約しなければなりません。

通常、実家は父親か母親かどちらかの名義、またはお二人の共同名義になっているかと思います。

いざ家を売ろうとした時に、所有者が認知症などで正常な判断ができなくなっていると、家の売却や預金解約や通帳の引き落としができなくなってしまうのです。

これは、判断ができない人の財産を守るためにつくられた「成年後見制度」によるもので、2000年(平成12年)4月1日に施行されました。

成年後見人制度は、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。

法定後見制度は、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

法務省 成年後見制度~成年後見登記制度~より抜粋

この制度のため、本人の「意思や判断能力の衰え(認知症など)」が起ると、たとえ子であっても、預貯金などの財産を一切使うことができなくなってしまうのです。

成年後見人が本人に代わり財産の管理

これらの財産を使うためには、家庭裁判所から選任された「成年後見人」が必要となります。

成年後見人になると、以下の管理が任せられます。

【成年後見人の権限】

  • 厳禁、預貯金、不動産の管理
  • 収入、支出の管理
  • 有価証券等の管理
  • 税務処理
  • 医療に関する契約
  • 施設への入所契約
  • 生活、療養に関する契約

つまり、財産管理と、身体監護のほとんどすべてについて、本人に代わって成年後見人が管理することになります。

例え実子であっても成年後見人の許可がなければ、実家の処分どころか、親の預貯金も下ろすことができなくなってしまうのです。

実子でも成年後見人になれない場合がある

成年後見人は、本人の子、親族、第三者、司法書士や弁護士などの専門職がなることができます。

子どもや親族が成年後見人になろうと家庭裁判所に申立てても、「不適切」と判断して認められないケースがあります。

  • 本人との間に、
  • 多額の借金がある
  • 生活費が分離されてない
  • 親族間の対立がある

などの場合は、申請しても認めらません。

そのような人に管理を任せると、財産を使われてしまう可能性があるからです。

そのような場合には、司法書士や弁護士などの専門職の中から「成年後見人」を選任することになります。

成年後見人に第三者がなった場合には、裁判所が決めた報酬(3万~5万円)を毎月支払わなければならなくなります。

毎月決まったお金を払う

介護費用がかかって家計が苦しいのに、第三者の成年後見人をつけられて、毎月数万円も払うなんて、本当にたまりませんよね。

そんなことを避けるには、どうすればよいでしょうか。

方法は2つあります。1つは、親の判断力のあるときに、「任意後見人」になっておくこと。もうひとつは、「家族信託」を利用することです。

任意後見人とは

「任意後見人」とは、本人が契約などの判断ができるうちに、将来の後見人を事前に決めておく制度です。

判断力が低下してしまった人に対しては「成年後見人」、正常な判断ができるうちに決めておくのが「任意後見人」です。

「任意後見人」になるには、本人と後見人になる人が出向き、公証人役場で「任意後見契約」を結んでおくことが必要です。

任意後見人になれば、財産の管理や家の処分なども行えるようになりますが、「任意後見人制度」にも一つ問題があります。

それは、「任意後見人」にしても、その任意後見人を管理する「任意後見監督人」が必要になるということです。

「任意後見監督人」は、弁護士,司法書士,社会福祉士,税理士などの中から家庭裁判所が選任します。

そして、この人たちにも監督報酬として、毎月1万円~3万円の報酬を払わなければならないのです。

せっかく、費用をかけないで身内を後見人として決めておいても、それを監督する人をつけられお金を払う必要があるなんて、『だれのための制度なの?』という感じですよね。

家族信託とは

家族信託とは、財産の管理を信頼できる家族に託す契約をいいます。

平成19年9月30日に改正された信託業法に盛り込まれたもので、もっと簡単に財産の管理を移管できるようつくられた制度です。

家族間でも財産を譲ってしまうと贈与税がかかりますが、家族信託では財産の管理だけを移管するので税金はかかりません。

また、『死亡時の財産を誰に譲るか』なども決めておけるので、遺言書の代わりとしても使うことができます。

親の判断がしっかりしているうちに、本人と信託契約しておくことで、認知症などになったときでも成年後見制度に頼らず、財産の管理をすることができます。

家族信託を始めるには

家族信託をするには、本人としっかり話し合い以下のことを決めておきます。

①何を信託するのか
 土地、建物、現金、有価証券など、具体的な資産

②誰に信託するのか
 夫、妻、親族など、誰に管理を誰に委託するのかを決めます。

③何のために信託するのか
 信託する目的を明確にしておきます。例えば、親の介護生活を守るためなどです。

家族信託をはじめるには

家族委託は、契約書を作成することで成立します。契約する手段には、以下の3つの方法があります。

①委託者と受託者の信託契約
委託者(本人)と受託者(管理する人)が直接「信託契約書」を作成し、捺印します。

②委託者の遺言によるもの(遺言代用信託)
財産の管理である「信託契約」に、「遺言機能」がプラスされた契約書です。

③委託者兼受託者が行う信託宣言
自筆証書遺言で信託する

信託契約は、必ず公正証書で作成しなければならないという制限はなく、自筆証書でも可能です。

しかし、自筆で作成した契約書は、「本人の筆跡か・・、強制的に書かせたのでは・・」など、後でいろいろな問題になることが多いようです。

また、内容が不備の場合には、信託契約として認められないこともあります。

最低必要な項目は、以下のような内容です。

【家族信託契約の記載内容】

  1. 委託者に関する事項
  2. 受託者に関する事項
  3. 受益者に関する事項
  4. 信託の目的
  5. 信託財産の管理方法
  6. 信託の終了の事由
  7. その他の信託の条項

けっこう専門的な内容もあるので、司法書士さんに依頼したほうが安心です。

また、各地の司法書士協会による無料相談会(30分程度)が開催されているので利用してみるのも手です。

専門家の相談窓口

司法書士に作成依頼すると費用はかかりますが、成人後見人や後見監督人へ報酬を支払い続けるよりは断然お得です。

また、家族が直接資金や財産を管理できるので、急にお金が必要なときでも柔軟に対応できるのが一番のメリットです。

親が認知になる前にしっかり信託契約

家族信託は、まだ世間にあまり浸透しておらず、金融機関でもよく知らない人がいるという現状です。

しかし、認知症の人がどんどん増えている中、親の財産の管理はとても深刻な問題になっています。

認知症になってしまうと、介護費用に使うのであっても、実子であっても、成年後見人に許可を求めないと使えないという、厳しい現実があります。

しかも、少ない親の財産の中から報酬として毎月数万円が引き落とされ、成年後見人の報酬交渉も、亡くなるまで解任することもできないのが成年後見制度なのです。

認知症対策としてスタートした成年後見制度は、あまりにも理不尽で、穴だらけの制度のような気がしてしまいますよね。

家族信託は、そんな成年後見制度の穴をカバーしてくれるシステムですので、ぜひ活用してみてください。

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