老人ホーム入居で親の家(実家)を売るときの【3000万円特別控除】とは
2017/08/24
親が老人ホームに入居し、親の家(実家)が空き家になるケースは本当に多いですよね。
もう、親が自宅には戻ってこれないと判断した場合、実家を処分して、老人ホームの費用や介護費に充てたいと思うことがあります。
この時注意しなくてはいけないことが、親の家を売ると「譲渡税」と言う税金がかかることがあると言うことです。
(※親が亡くなったあとで実家を処分する場合は、遺産相続になりますので、税率は生前売買より低くなります。)
譲渡税には、3,000万円の特別控除が適応されますので、家を売った利益分に対して3,000万円は非課税になります。
しかし、空き家になって3年以上たった家は、自宅(マイホーム)と認められず売却したときこの控除が受けられません。
この特別控除は「自宅(マイホーム)の売却」に適応される制度だからです。
自宅(マイホーム)とは、生活の拠点がある場所のことを言い、老人ホームに入居している場合、老人ホームが生活の拠点となります。
(※マイホームの価格が購入した時より下がっていれば、譲渡税はかかりません)
譲渡税とは
譲渡税は、土地や家を売った時にかかる税金です。
自分の家を売却して利益を得た場合、所得としてみなされ、その利益(課税譲渡所得金額)に対して税金がかけられます。
「譲渡所得金額」は、家を売った金額から、家を買った金額(取得費)や経費(譲渡費用)、特別控除額を差し引いて計算します。
マイホーム売却の場合の、特別控除額は3000万円となります。
これだと良く分かりませんよね^^; ここで例を挙げてご説明します。
昭和60年(1985年)に4500万で建売りを購入したマイホームを、平成29年(2017年)に2000万円で売却(譲渡費用 約3%)した場合の譲渡税はいくらでしょうか?
マイホームの保有期間が32年なので、長期譲渡、軽減税率の特例を受けることができます。(※長期譲渡とはマイホームを購入して5年以上たっている場合)
課税譲渡所得金額が、マイナスとなり利益がでていないことになりますから、譲渡税は0円となります。
バブル期に買った家などの場合、ほとんどが原価割れしていると思いますので、譲渡所得はマイナスになり税金0円となります。
また、売却利益が3000万円となった場合も、3000万円の特別控除があるため、 課税譲渡所得金額が0となり、税金が0円となります。
これが、「居住用財産の3,000万円特別控除」です。
ただし、特別控除は、「住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること」という条件がありますので注意が必要です。
譲渡税がかかると分かった場合、家を売るなら、老人ホームへ移ってから3年目の年末までに売却してください。
土地や家の取得費がわからない場合
ここで、親の家の価格がいくらだったか?分からないケースをご紹介します。
先祖から代々受け継いだ土地や建物の場合、取得費が分からないことがありますよね。
このような場合の取得費は、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることになっています。
例)4000万円で売れた家の取得費がわからない場合の取得費
この場合、購入した時の家の価格は200万円になります。200万円で買った家が4,000万円で売れたことになり、3,800万円の利益が出たことになってしまいます。
3000万円の特別控除が適応されても、800万円(3,800万円-3,000万円)に対しての税金が発生し、課税譲渡所得金額がプラスになるため税金が発生してしまいます。
特別控除が適応されない場合は、3,800万円に対してもろに税金がかかってしまいます。
マイホームの所有期間によって税率が違う
では、課税譲渡所得金額がプラスの場合、いったいどれくらい税金がかかるのでしょうか。
課税の税額は、マイホームの保有年数によって異なってきます。住んでいた期間が長いほど、税率が優遇されます。
譲渡税の税率
所得期間 | 5年以内 | 5年~10年 |
短期譲渡 | 長期譲渡 | |
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
所有期間が10年以上の場合の軽減税率の特例
課税長期譲渡 所得金額 |
6,000万円以下 | 6,000万円以上 |
所得税 | 10.21% | (課税所得金額-6,000万円)×15%+600万円 |
住民税 | 4% | 5% |
※上記は、所得税に復興特別所得税(所得税の2.1% H25.1.1~H49.12.31までの25年間)が加味された税率です。
老人ホームに移って住まなくなった家は3年以内に売るべきか
譲渡税がかかる場合、親が老人ホームに移ってから3年以内に親の家を売却すると特別控除が適応されることが分かりました。
また、譲渡税の有無に関わらず、親の家を売って費用に充てたいと思うこともありますよね。
親が老人ホームに入居したとき、家を売却するかどうかは、とても難しい判断になります。
それは、家は親にとって心の支えであり、人生そのものの存在だからです。
家には、家族の思い出があり、仏壇があり、洋服があり、安らぎがあり、子供や孫たちを待つ場所でもあります。
ですから、親の生きているうちに、家を売却してしまうという判断は、とてもむずかしいことになります。
親が住んでいない家を売れない理由
- 元気になって戻ってこれるかもしれない
- たまには施設から家に連れてきて過ごさせてあげたい
- 仏壇や線香上げにこさせてあげたい
- 家がなくなったら、すぐに弱ってしまうかも
- 悲しむ親の顔を見たくない
- 親が生きているのに財産処分するのはできない
- 親が帰りたいと言ったどうしよう
このような事を考えると、親に家を売って施設の費用にあてようとは、なかなか言い出しにくいものですね。
親の家を処分する場合は、兄弟や親戚にも良く相談して、後悔のないよう売却してください。